フォワーダーと乙仲の違いとは?国際物流のプロが教える最適な選び方ガイド
フォワーダーと乙仲の違いとは?国際物流のプロが教える最適な選び方を解説
はじめに:国際物流の成功は適切なパートナー選びから
国際貿易を始めたい、あるいは既に行っている企業や個人事業主の皆様にとって、「フォワーダー」と「乙仲」という言葉は避けて通れないものです。しかし、この2つの違いや、どのようなケースでどちらを利用すべきかについて、明確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、国際物流の要となるフォワーダーと乙仲の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして自社のビジネスに最適なパートナーの選び方まで、徹底的に解説します。この記事を読むことで、あなたの国際物流戦略が一段と洗練されたものになるでしょう。
フォワーダーとは国際物流の総合コーディネーター
フォワーダーの定義と基本機能
フォワーダー(Forwarder)とは、国際物流において荷主の代理人として、貨物の輸送を取りまとめる事業者のことです。正式には「国際複合一貫輸送事業者」または「国際利用運送事業者」と呼ばれます。
フォワーダーの主な業務は以下の通りです
- 最適な輸送ルートの提案と手配
- 海上・航空輸送の予約と手配
- 輸出入通関の代行(通関業の登録がある場合)
- 輸送に関する各種書類の作成支援
- ドア・ツー・ドアの一貫輸送サービスの提供
- 貨物の集荷・配送の手配
- 保険手配や貨物追跡サービス
つまり、フォワーダーは「国際物流の総合プロデューサー」であり、荷主の要望に合わせて最適な物流ソリューションを提供するのが役割です。
フォワーダーの種類と特徴
フォワーダーは大きく分けて次の3種類に分類できます
-
大手総合フォワーダー
世界的なネットワークを持ち、あらゆる輸送手段と幅広いサービスを提供します。日本通運、郵船ロジスティクス、近鉄エクスプレスなどが代表例です。 -
専門特化型フォワーダー
特定の地域や輸送モード、業界に特化したサービスを提供するフォワーダーです。例えば、アジア専門、航空貨物専門、アパレル業界専門など、専門性の高いサービスが特徴です。 - NVOCC(Non-Vessel Operating Common
Carrier)
自社で船舶を所有せずに、船会社からスペースを借りて運送サービスを提供する事業者です。独自のB/L(船荷証券)を発行できる点が特徴です。
フォワーダー利用のメリット・デメリット

メリット
- 輸送の全プロセスを一括して任せられる利便性
- 複数の輸送手段や業者間の調整を代行してくれる
- 最適なルートや輸送手段の提案による物流コスト削減
- 国際物流に関する専門知識とノウハウの活用
- トラブル発生時の対応やサポート
デメリット
- 直接契約するよりもコストが増加する場合がある
- フォワーダーによってサービス品質にばらつきがある
- 大手フォワーダーでは小口貨物に対応しない場合もある
乙仲とは?通関のスペシャリスト
乙仲の定義と基本機能
「乙仲」とは、「乙種通関業者」の略称で、正式には「通関業者」と呼ばれます。主に税関における輸出入通関手続きを専門とする事業者です。
乙仲の主な業務は以下の通りです
- 輸出入申告書類の作成と申告代行
- 関税等の納付代行
- 税関検査の立会い
- 各種許認可手続きの代行
- 関税法などの法令に関するアドバイス
- 原産地証明書等の各種証明書の取得代行
乙仲の最大の特徴は、「通関士」という国家資格を持つ専門家が在籍し、複雑な通関手続きを正確かつ効率的に行える点です。
乙仲の歴史と日本における位置づけ
「乙仲」という呼び名は日本独特のもので、その歴史は明治時代にまで遡ります。当時、税関周辺には「甲種商社」と「乙種商社」があり、甲種は外国貿易商、乙種は通関を請け負う業者を指していました。この「乙種」と「仲立ち」を組み合わせて「乙仲」と呼ばれるようになったのです。
現在の通関業は、1967年に制定された通関業法によって規定されており、税関長の許可を受けた者だけが営むことができる専門性の高い業種です。
乙仲利用のメリット・デメリット
メリット
- 通関手続きに関する専門知識による正確な申告
- 通関に関するトラブル防止と迅速な解決
- 関税法や輸出入規制に関する最新情報の提供
- 税関との信頼関係による円滑な手続き
- 特殊な許認可が必要な貨物への対応力
デメリット
- 通関以外の物流サービスは基本的に提供していない
- 小規模な業者では対応地域や対応可能な品目が限定的
- 輸送全体を見据えたコンサルティングは期待しにくい
フォワーダーと乙仲の違い:5つの重要ポイント
フォワーダーと乙仲の主な違いを以下の5つのポイントから解説します。
1. 業務範囲の違い
フォワーダー
輸送計画の立案から実行まで、国際物流の全プロセスをカバーします。海上・航空輸送の手配、国内輸送、倉庫保管、通関など、ドア・ツー・ドアの一貫サービスを提供できます。
乙仲
主に通関手続きに特化しており、税関での輸出入申告や関連手続きを専門としています。物流全体のコーディネートは基本的に行いません。
2. 法的位置づけの違い
フォワーダー
貨物利用運送事業法に基づく「貨物利用運送事業者」として登録が必要です。通関業務を行う場合は別途「通関業者」としての許可も必要となります。
乙仲
通関業法に基づく「通関業者」としての許可が必要です。また、業務執行にあたっては「通関士」という国家資格保持者の配置が義務付けられています。
3. ビジネスモデルの違い
フォワーダー
運送人から運送枠を購入し、それを荷主に販売するというビジネスモデルです。運賃の差額や各種手数料が主な収益源となります。
乙仲
通関業務の代行料(通関料)を主な収益源としています。申告件数や貨物の複雑さによって料金が変動します。
4. 対応可能なサービスの違い
フォワーダー
- 輸送手段の選定と予約
- コンテナや航空機のスペース確保
- 混載サービス(LCL)の提供
- 倉庫保管や流通加工
- 通関業務(許可がある場合)
- 保険手配や貨物追跡
乙仲
- 輸出入申告の代行
- 関税等の納付代行
- 各種許認可の取得代行
- 原産地証明書等の取得サポート
- 関税評価や品目分類のコンサルティング
5. 選ぶべき状況の違い
フォワーダーを選ぶべき状況
- 国際輸送全体を一括して任せたい場合
- 最適な輸送ルートや方法のアドバイスが欲しい場合
- 複数国を経由する複雑な輸送が必要な場合
- 小口貨物の混載サービスを利用したい場合
- 物流コスト全体の最適化を図りたい場合
乙仲を選ぶべき状況
- 既に輸送手段が確保されており、通関のみ依頼したい場合
- 特殊な商品や規制品目の通関に専門知識が必要な場合
- 関税関連のアドバイスや節税対策を検討している場合
- 特定港や空港での継続的な通関業務が発生する場合
フォワーダーと乙仲の関係性:協力と競合
業界構造とビジネス連携
実は、フォワーダーと乙仲は対立関係ではなく、相互補完的な関係にあることが多いです。フォワーダーが通関業の登録を持っていない場合は、乙仲に通関業務を委託します。一方、乙仲も自社だけでは完結できない物流サービスをフォワーダーと連携して提供することがあります。
最近では、総合物流企業が両方の機能を持つケースも増えており、一社で国際物流のワンストップサービスを提供する傾向があります。
業界の最新動向:デジタル化と統合の波
国際物流業界は今、大きな変革期を迎えています
- デジタルトランスフォーメーション
ブロックチェーン技術やAIを活用した書類の電子化、手続きの自動化が進んでいます。 - 業界再編と統合
M&Aによる大型統合や、異業種からの参入も増加しています。 -
サービスの多様化
単なる輸送や通関だけでなく、コンサルティングやサプライチェーン全体の最適化サービスも提供するようになっています。 -
環境配慮型物流への移行
カーボンニュートラルを目指した輸送手段の選択やCO2排出量の可視化サービスも登場しています。
荷主として最適なパートナーを選ぶための7つのポイント
国際物流のパートナーを選ぶ際に確認すべき7つのポイントを解説します。
1. 自社のニーズを明確にする
まずは自社が何を求めているのかを整理しましょう
- 輸送の頻度と量はどれくらいか
- 特殊な取扱いが必要な商品か
- 重視するのはコスト、スピード、安全性のどれか
- 通関だけか、一貫輸送が必要か
2. 対応地域と専門分野を確認
取引予定の国や地域に強みを持つ業者を選びましょう。また、自社の取扱商品に関する知識や経験が豊富な業者がベストです。
例えば
- 食品や化粧品には輸入規制に詳しい業者
- 機械や精密機器には梱包や保険に詳しい業者
- アパレルには季節性や在庫管理に強い業者
3. サービス内容と料金体系の透明性
見積もりの内訳や料金体系が明確で、追加料金などの説明が丁寧な業者を選びましょう。安さだけでなく、含まれているサービスの範囲も重要です。
4. コミュニケーション能力とレスポンス
問い合わせへの対応の速さや、トラブル時の連絡体制は非常に重要です。特に以下のポイントをチェックしましょう
- 担当者の専門知識とコミュニケーション能力
- 緊急時の連絡体制(24時間対応の有無など)
- 多言語対応の有無(海外とのやり取りが多い場合)
5. IT対応力とトレーサビリティ
現代の国際物流においてITシステムの活用は不可欠です
- オンライン予約や書類提出の可否
- 貨物追跡システムの有無と使いやすさ
- データ分析やレポート機能の充実度
6. 実績と信頼性
業界での評判や実績も重要な判断材料です
- 業界での営業年数
- 同業種の顧客実績
- 各種認証や資格の取得状況(AEO認定事業者など)
- 財務状況の安定性
7. 将来的なパートナーシップの可能性
単発の取引ではなく、長期的なパートナーとしての適性も考慮しましょう
- 自社の成長に合わせたサービス拡大の可能性
- 改善提案や新しいソリューションの提案力
- 経営理念や企業文化の相性
実例で見る!フォワーダーと乙仲の選び方
ケーススタディ1:中小製造業の輸出拡大
状況
国内の中小製造業者Aさんが、初めてアジア向けに工業部品の輸出を開始することになりました。貿易実務の経験が少なく、効率的な物流体制を構築したいと考えています。
最適な選択
この場合、フォワーダーを選ぶのが最適です。
理由は以下の通り
- 輸出実務の全体的なサポートが必要
- 最適な輸送ルートや方法のアドバイスが役立つ
- 各種書類作成から通関まで一括して依頼できる
- トラブル発生時のバックアップ体制が安心
Aさんは地域の商工会議所などでの紹介や、同業他社の推薦を受けて中堅フォワーダーと契約。初回は手厚いサポートを受けながら、徐々に自社でもノウハウを蓄積していきました。
ケーススタディ2:専門商社の効率化
状況
食品専門商社Bさんは、すでに自社で輸送手配を行っており、通関業務の効率化と専門知識の活用を目的としてパートナーを探しています。特に食品の輸入規制や検疫対応に詳しい業者が必要です。
最適な選択
この場合は、食品輸入に強い乙仲を選ぶのが最適です。
理由は以下の通り
- 既に輸送手配は自社で完結している
- 食品衛生法や植物防疫法などの専門知識が必要
- 税関や検疫所との交渉力が重要
- 関税分類や減免税制度の活用でコスト削減が期待できる
Bさんは複数の乙仲から見積もりを取り、食品輸入の実績や食品衛生法に詳しい通関士の在籍状況を確認した上で、専門性の高い中小の乙仲と契約しました。
ケーススタディ3:ECビジネスの越境展開
状況
アパレルのECサイトを運営するCさんが、越境ECを開始し、個人向け小口配送の国際物流体制を構築する必要が出てきました。返品対応も含めた一貫したサービスが必要です。
最適な選択
この場合は、EC向けサービスに特化したフォワーダーか、フォワーダー機能を持つ国際物流企業が最適です。
理由は以下の通り
- 小口多頻度の輸送に対応できる体制が必要
- 通関だけでなく最終配送までの一貫体制が重要
- 返品や交換などの逆物流対応も必要
- 配送状況の追跡システムやカスタマーサポートも重要
Cさんは複数の国際物流企業のEC向けサービスを比較し、越境EC専用プランを提供している大手フォワーダーと契約。顧客満足度を維持しながら国際展開を進めることができました。
国際物流でよくあるトラブルと対処法
1. 貨物の遅延
トラブル
予定よりも貨物の到着が遅れ、ビジネスに影響が出る
対処法
- 事前に余裕を持ったスケジュール設定
- 複数の輸送ルートや手段の検討
- 緊急時の代替手段(エアでの振替など)の事前確認
- トラッキングシステムによる常時監視
2. 予想外の追加費用
トラブル
当初見積もりになかった追加料金(検査費用、保管料、為替変動など)が発生
対処法
- 見積もり時に含まれる・含まれないコストの明確化
- 為替変動リスクのヘッジ
- 荷受け体制の整備による滞船料・滞貨料の回避
- 年間契約による料金の安定化
3. 通関トラブル
トラブル
書類不備や申告ミスによる通関の遅延や追加対応
対処法
- 事前の輸出入規制の確認
- HS(関税分類)コードの正確な特定
- 原産地証明書など必要書類の事前準備
- 専門知識を持つ乙仲やフォワーダーの活用
4. 貨物損傷・紛失
トラブル
輸送中の貨物損傷や一部紛失
対処法
- 適切な包装と梱包の徹底
- カーゴインシュアランス(貨物海上保険)の付保
- 出荷前と到着時の写真撮影による証拠保全
- コンテナシールの確認と記録
5. コミュニケーション不足
トラブル
言語や時差、担当者の変更などによるコミュニケーション齟齬
対処法
- 重要事項の書面による確認
- 定期的な進捗確認ミーティングの設定
- 複数の連絡手段の確保
- 現地言語に対応できるスタッフやパートナーの活用
まとめ:あなたのビジネスに最適な選択を

国際物流の成功は、単にモノを運ぶだけでなく、的確なパートナー選びから始まります。フォワーダーと乙仲は、それぞれに強みと特性があり、ビジネスの状況や目的によって最適な選択肢が変わってきます。
フォワーダーを選ぶべき状況
- 国際物流の経験が少なく、トータルサポートが必要
- 複数の輸送手段や国をまたぐ複雑な物流が必要
- 物流全体の最適化やコスト削減を図りたい
- ドア・ツー・ドアの一貫輸送を希望する
乙仲を選ぶべき状況
- 既に輸送手段は確保しており、通関のみ効率化したい
- 特殊な商品や規制品目を扱っている
- 関税分類や特恵関税などの専門知識を活用したい
- 特定の港や空港で継続的に通関業務が発生する
重要なのは、自社のニーズを明確にし、それに合ったパートナーを見つけることです。また、国際物流は一度構築して終わりではなく、定期的な見直しと改善が必要です。安定した取引ができるようになった後も、さらなる効率化や新しいサービスの活用を検討し続けることが、グローバルビジネスの競争力維持につながります。
最後に、フォワーダーと乙仲は「敵か味方か」という二項対立ではなく、それぞれの専門性を活かしながら国際物流をサポートするパートナーです。両者の特性を理解し、自社のビジネス戦略に合わせて最適な選択をすることで、効率的かつ安定した国際物流体制を構築できるでしょう。
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