【国際物流への影響】2025年の物流問題とは?輸出入の課題と対策を解説

【この記事のポイント】「2024年問題」との違い
物流業界の課題としてよく耳にする「2024年問題」は、主に働き方改革関連法の適用による時間外労働規制を直接的な原因とする問題を指します。
一方で本記事で解説する「2025年の問題」は、その影響が社会経済に本格的に現れる2025年以降の状況に加え、団塊世代の大量退職による構造的なドライバー不足の深刻化など、より中長期的で複合的な課題を指しています。本記事では、この視点から国際物流への影響を深掘りします。
国内のトラック輸送に大きな影響を及ぼす「2025年の物流問題」。これは国内だけの問題だと思われがちですが、実際には港と内陸を結ぶドレージ輸送や、輸出入貨物の集荷・配送に直結し、日本の国際競争力をも揺るがしかねない重大な課題です。
この記事では、2025年にかけての物流問題の基本的な解説に加え、「輸出入業務にどのような影響が出るのか?」という国際物流の視点にフォーカス。ドレージ輸送の危機からリードタイムの悪化、そして荷主企業やフォワーダーが今すぐ取り組むべき実践的な対策まで、国際物流プラットフォーム「LogiMeets」が徹底的に解説します。
この記事の目次
1. (おさらい)「物流の2024年問題」を引き起こす3つの要因
「2025年の物流問題」は、2024年に顕在化した課題の延長線上にある、より深刻で構造的な問題を指します。2025年以降の状況を正しく理解するため、まずはその根底にある3つの要因(「2024年問題」を構成する要素でもあります)を改めて確認しましょう。
- ① 働き方改革関連法の適用による時間外労働の制限:
2024年4月1日から、自動車運転業務に対して時間外労働の上限が罰則付きで年間960時間に設定されました。これは、ドライバーの健康確保と長時間労働の是正という、社会的に極めて正当な目的を持つものです。しかし、これまで個々のドライバーの長時間労働に依存してきた輸送体制は、この規制によって維持が困難になりました。特に、片道500kmを超えるような長距離輸送は、一人のドライバーが往復することが物理的に不可能になるケースが出てきています。 - ② 構造的なドライバー不足と深刻な高齢化:
トラックドライバーの有効求人倍率は全職業平均の約2倍と、恒常的な人手不足にあります。さらに、ドライバーの年齢構成は、50歳以上が全体の45%以上を占める一方、29歳以下は10%に満たないという、極めていびつなピラミッド構造になっています。若年層にとって、長時間・不規則な勤務体系や、賃金水準が魅力的に映らず、このままでは団塊世代の大量退職と共に、輸送能力が物理的に失われる「物流クライシス」が現実のものとなります。 - ③ EC市場拡大に伴う、小口多頻度化という構造変化:
コロナ禍を経て、日本のEC市場は約20兆円を超える巨大市場へと成長しました。この消費行動の変化は、物流現場に「小口多頻度化」という大きな構造変化をもたらしました。かつて10トントラック1台で1社に届けていた荷物が、今では同じトラックで10軒、20軒の届け先を回る必要があります。これにより、一台あたりの積載効率は著しく低下し、配送件数の増加がドライバーの負担をさらに増大させるという悪循環に陥っています。
2. 【本題】2025年の問題が国際物流に与える3つの深刻な影響
これらの国内問題は、輸出入の現場にいる私たちに、具体的にどのような形で影響するのでしょうか。特に警戒すべきは以下の3点です。
影響1:ドレージ輸送の停滞とコスト高騰
港に到着した海上コンテナを内陸の目的地へ、あるいはその逆を輸送する「ドレージ輸送」。このドレージ輸送も当然トラックで行われるため、ドライバー不足と労働時間規制の直撃を受けます。特に、港湾エリアでの輸送は専門性が高く、対応できるドライバーが限られているため、問題はより深刻です。結果として、「コンテナが港から引き取れない」「輸出貨物を本船のカット日(船積締切日)に間に合わせられない」といった事態が頻発します。これにより、コンテナヤードの蔵置期限を超過し、高額なデマレージ(超過保管料)が発生したり、コンテナの返却が遅れてディテンション(返却延滞料)を請求されたりするリスクが飛躍的に高まります。
影響2:サプライチェーン全体のリードタイム悪化
国内輸送の遅延は、国際物流のリードタイム全体を悪化させます。例えば、輸出では、地方の工場から港への輸送に従来より1日多くかかるようになれば、予定していた本船への船積みができず(船落ち)、次の船を待つことになります。これは1週間の遅れを意味し、海外バイヤーとの契約不履行に繋がりかねません。一方、輸入では、港から基幹倉庫への配送が遅れることで、製造業であれば生産ラインが停止し、小売業であれば欠品による販売機会を損失するなど、事業の根幹を揺るがす事態に発展します。
影響3:物流コスト増による国際競争力の低下
ドレージ費用や国内集配運賃の上昇は、そのまま輸出入コストの増加に繋がります。これは、輸出製品の価格競争力を削ぎ、輸入製品の国内販売価格を押し上げる要因となります。例えば、海外の競合企業が物流の安定した国で生産している場合、日本企業だけが国内物流コストの上昇分を価格に転嫁せざるを得なくなり、価格競争で不利になります。これは単なる一過性のコスト増ではなく、日本の産業全体の国際市場におけるシェアをじわじわと奪っていく、構造的な問題なのです。
3. 【国際物流版】今すぐ始めるべき5つの対策
この国際的な課題に対し、荷主企業やフォワーダーはどのように立ち向かうべきでしょうか。対症療法ではなく、根本的な解決に繋がるアクションが求められます。
荷主企業・フォワーダー共通の対策
- ① 物流DXの推進(書類作成・情報共有の効率化):
貿易手続きには、I/VやP/Lなど多くの書類が伴います。これらの書類作成を効率化するツールの導入は、単なる時短以上の意味を持ちます。作成された正確なデータが事前に関係者(通関業者、運送会社)に共有されることで、貨物到着前の準備が可能になり、港や倉庫での「待ち時間」を大幅に削減できます。これが、ドライバーの拘束時間を短縮し、限られた労働力を有効活用する鍵となります。 - ② 輸送モードの多様化(モーダルシフト):
トラック輸送だけに頼る一本足打法は、もはやリスクでしかありません。特に、東京港から福岡の顧客へ届けるといった長距離輸送では、大型フェリーや鉄道コンテナ輸送を積極的に活用する「モーダルシフト」が不可欠です。これにより、長距離区間を船舶や鉄道が担い、ドライバーは港や駅から最終目的地までの短距離輸送に集中できます。これはドライバーの負担軽減とCO2排出量削減に直結し、企業の社会的責任を果たす上でも重要です。 - ③ パートナーとの連携強化と可視化:
荷主、フォワーダー、倉庫業者、運送会社が、それぞれ分断された情報を持つのではなく、共通のプラットフォーム上で貨物のステータスや輸送計画をリアルタイムで共有することが重要です。例えば、GPSでトラックの現在地を共有すれば、倉庫側は到着時刻を正確に予測し、荷役作業の準備を事前に行えます。これにより、突発的な遅延にも迅速に対応でき、サプライチェーン全体の柔軟性と強靭性が向上します。
荷主企業ができる対策
- ④ VMI(Vendor Managed Inventory)の導入検討:
これは、ベンダー(売主)が顧客の在庫を管理し、適切なタイミングで商品を補充する仕組みです。顧客からの急な発注に対応するのではなく、ベンダー側の計画に基づいて効率的なロットで商品を輸送できるため、物流の繁閑の波を平準化できます。これにより、運送会社は計画的な配車が可能となり、積載率の向上とコスト削減が期待できます。
フォワーダー・物流事業者ができる対策
- ⑤ 共同配送・倉庫の活用:
同じ方面に向かう複数の荷主の貨物を、同じコンテナやトラックで運ぶ「共同配送」は、積載効率を最大化する上で極めて有効です。また、輸入貨物においても、複数の企業が共同で利用できる倉庫を確保し、そこから各社の最終目的地へ配送する仕組みを構築することで、ドレージ輸送の回数を減らし、コストと環境負荷を同時に抑制できます。
4. 解決の鍵は「国際物流DX」と「新たなパートナーシップ」
国際物流において2025年にかけての課題を乗り越えるためには、個々の企業の努力だけでは限界があります。必要なのは、テクノロジーを活用した「国際物流DX」と、業界の垣根を越えた「新たなパートナーシップ」の構築です。これらは別々の概念ではなく、DXが新たなパートナーシップを可能にし、パートナーシップがDXの効果を最大化するという、相互補完の関係にあります。
「LogiMeets」は、まさにその両方を実現するための国際物流プラットフォームです。最適なフォワーダーや運送会社とのマッチングはもちろん、面倒なI/V・P/L(インボイス・パッキングリスト)の作成を効率化するツールや、画像やPDFの書類を必要な箇所のみデータ化するAI-OCRデータ変換ツールも提供。これらを活用することで、見積もり前の準備段階から、日々の煩雑な事務作業まで、国際物流全体のDXを力強く推進します。そして、そこで繋がったパートナーと、透明性の高いデータに基づいて、真に協力的な関係を築くことができるのです。
まとめ:危機を乗り越え、国際競争力を高めるために
2025年にかけての物流問題は、日本の輸出入に関わる全ての企業にとって避けては通れない、構造的な課題です。しかし、これは悲観すべき未来ではありません。見方を変えれば、旧来の非効率な慣行や、買い手有利の力関係を見直し、より強靭で持続可能な国際サプライチェーンを再構築する絶好の機会であると言えます。
荷主とフォワーダー、そして運送事業者が、対立するのではなく、同じテーブルに着いて知恵を絞る。そして、テクノロジーを最大限に活用し、勘や経験だけに頼らないデータに基づいた物流を実践する。LogiMeetsは、その挑戦を全力でサポートし、皆様の国際ビジネスの成功に貢献します。
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