「幅広い航路に対応」「丁寧なサポート」「競争力のある運賃」

どれも大切ですが、この説明だけでは、荷主は自社の輸送にどう役立つかを判断できません。

価格以外の強みは、荷主が困っている場面と、自社が実際にできる対応を結び付けて伝えます。例えば「納品先に大型車両が入れない」という相談に、積み替え場所・車両・荷卸しの確認手順を示せれば、運賃表だけでは分からない対応範囲を説明できます。

この記事では、荷主との接点ができた後に、どの案件へ何を提案するかを整理します。営業先を探す手法は新規顧客開拓のガイドで紹介しています。

1. 「得意」を対応範囲・根拠・条件に分ける

営業担当だけで考えず、手配担当にも「どの航路や貨物なら、必要な確認先や作業をすぐ挙げられるか」を聞いてみてください。現地集荷、梱包、納品予約など、普段対応している作業が提案の材料になります。

社内で整理しておく提案材料
分野具体化する内容確認する根拠・条件
航路・地域対応する出発地・仕向地、現地で手配できる作業最近の取扱履歴、協力会社の対応地域・連絡体制
貨物・荷姿取扱経験のある品目、寸法・重量、梱包・固定方法今回の貨物にも適用できるか、設備・受託条件
納品条件積み替え、小型車配送、予約納品などの調整倉庫・車両・人員の確保可否と追加費用
連絡・引き継ぎ予定変更時の連絡先、担当不在時の確認方法実際の担当体制、対応時間、案件の記録方法
見積もりの説明費用の内訳、除外項目、未確定事項の整理見積書と手配内容の一致、変更時の再確認手順

「自社で行う作業」と「協力会社を通じて手配する作業」を区別します。過去に対応したことがあっても、今回も同じ料金・納期・設備で対応できるとは限りません。実績を紹介する際は時期や輸送条件を添え、顧客情報の公開範囲も確認してください。

2. 荷主の課題を確認する質問例

強みの説明を始める前に、今回の相談で見直したいことを尋ねます。現在の物流会社への不満があると決めつけず、新しい航路や出荷量の変化も含めて確認しましょう。

  • 相談の背景:「今回、輸送方法や依頼先を検討されている理由を教えていただけますか」
  • 優先条件:「費用・納品日・受入方法のうち、変更が難しい条件はどれですか」
  • 手間がかかる作業:「書類の確認や予定変更の連絡で、繰り返し対応していることはありますか」
  • 今後の出荷:「今回のみの出荷でしょうか。継続する場合、時期や荷量の見込みはありますか」
  • 社内判断:「比較するために必要な説明や資料、検討の時期は決まっていますか」

回答は「困りごと」「変更できない条件」「未確認の条件」に分けて記録します。例えば納品日を優先する荷主に、安いが希望日に間に合わない案を中心に提案しても、選ぶ理由にはなりません。

3. 抽象的な強みを、具体的な対応に言い換える

以下は説明方法を示す例で、特定企業の実績ではありません。自社で確認できる内容だけを使い、対応の条件も添えてください。

荷主が対応内容を判断できる説明
抽象的な説明具体的に伝える例提案前の確認
中国輸入が得意です[地域]からの[品目]について、現地集荷から国内配送まで窓口をまとめて調整します対象地域、集荷条件、現地協力会社の対応可否
柔軟に対応しますコンテナで納品できない場合は、倉庫で荷卸しし、小型車へ積み替える案を見積もります倉庫・車両の空き、貨物寸法、荷卸し設備
丁寧にサポートします予定が変わった際は、変更内容と未確定事項、次の確認予定をまとめてお伝えします情報を確認する担当、連絡先、対応時間
分かりやすい見積もりです納品先までに含む作業と、条件によって追加になる費用を分けて提示します見積範囲、費用の算定方法、有効期限

提案理由は「課題→対応→条件」の順に書く

説明例
納品先ではコンテナ車両を受け入れられないと伺ったため、港から倉庫へ搬入し、荷卸し後に小型トラックで配送する案をご提案します。倉庫作業と配送の窓口を当社でまとめます。貨物の寸法・重量と希望日に応じて設備・車両を確認し、積み替え費用を含む見積もりを提示します。

この説明なら、荷主は「どの問題を解決する提案か」「何を確認すれば進むか」を判断できます。金額・作業範囲・未確定事項を含む提案文の作り方は、フォワーダーの見積もり提案ガイドをご覧ください。

進捗共有も、実際の運用を説明する

「輸送を見える化します」だけで終わらせず、何を共有するか、誰が更新するか、担当者不在時に誰が確認できるかを示します。追跡情報の表示と、納品に向けた調整を分けて説明すると、荷主が期待する対応範囲を合わせやすくなります。

共有する項目の例は輸出入の進捗管理ガイドで確認できます。

4. 自社の強みが役立つ案件を選ぶ

問い合わせ件数だけを追うと、受託が難しい案件への見積作業が増えることがあります。提案前に、次の順で対応可否を確認しましょう。

  • 受託できるか:航路・貨物・重量・必要設備が、自社と協力会社の対応範囲に入るか。
  • 希望条件に対応できるか:出荷時期、納品日、受入方法について確認の見通しが立つか。
  • 強みが役立つか:荷主の課題に対して、具体的な対応を説明できるか。
  • 継続できる条件か:仕入費用に加え、手配・連絡・確認にかかる工数を含めて採算を検討したか。

条件が合わない場合は、対応できる範囲と難しい範囲を伝えます。荷量や出荷時期の調整が可能なら代替案を相談し、必須条件に対応できない場合は、その理由を早めに案内してください。

5. 受注率だけでなく、選ばれた理由を振り返る

一定期間ごとに、提案した航路・貨物、荷主の優先条件、見積作業の時間、受注・失注の理由を振り返ります。「価格が高い」という回答でも、同じ費用範囲で比較されたか確認できていなければ、その点を未確認として残します。

受注後は、提案した対応を実行できたかまで振り返ります。例えば「窓口をまとめる」と案内したのに、荷主が倉庫と配送会社へ別々に連絡していたなら、引き継ぎや連絡方法の見直しが必要です。受注理由として聞けたことと、自社の推測は分けて記録しておきます。

6. 強みを伝える営業でよくある質問

実績が少ない会社は何を伝えればよいですか?

自社で確認できる対応範囲、確認手順、連絡体制を具体的に説明します。協力会社の経験や担当者個人の経験を、自社の受託実績と混同しないことも大切です。

得意分野を絞ると、相談が減りませんか?

得意分野を絞って伝えることは、ほかの相談を断ることとは別です。会社案内には対応範囲を載せ、個々の提案では今回の航路・貨物に関係する説明を優先すれば、相談先としての幅を保てます。

荷主が価格だけを重視している場合はどうしますか?

必要な作業と費用範囲を確認し、出荷時期・輸送方法・納品条件の変更で調整できるか相談します。荷主が必要としていない付加サービスを一方的に加えず、自社が継続して対応できる条件を示しましょう。