越境ECでは、販売の仕組みと同じくらい、物流の設計が売上と利益に影響します。送料が高すぎると購入されず、関税の扱いが分かりにくいと受け取りを拒否され、返品の対応が遅いと評価が下がります。
越境ECの物流は、販売数量と商品の特性に合わせて「1件ずつ日本から送る」か「まとめて海外倉庫に送る」かを選び、関税・税金を誰がどのタイミングで払うかを決めることが基本です。この記事では、日本から海外の消費者に販売する事業者向けに、物流の選び方をまとめます。
1. 3つの発送方法の比較
| 方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 国際郵便 | 小さく軽い商品、注文数が少ない段階 | 追跡・補償の範囲はサービスによって異なる。国によって日数にばらつき |
| 国際宅配便(クーリエ) | 早く確実に届けたい商品、単価の高い商品 | 送料が高め。関税の請求方法を事前に決める必要 |
| 海外倉庫からの発送 | 特定の国で継続して売れている商品 | 在庫を持つリスク、倉庫の費用、倉庫への一括輸送と輸入通関の手配 |
国際郵便とクーリエの違いは国際郵便・クーリエ・フォワーダーの選び方にまとめています。海外倉庫を使う場合、倉庫までの輸送は、通常の企業間の輸出(海上・航空)として手配します。
2. 関税・税金の負担方法
海外の消費者に届ける商品には、仕向地の関税や付加価値税がかかることがあります。誰が払うかによって、購入者の体験が大きく変わります。
- 購入者が受け取り時に支払う:販売価格は安く見えますが、受け取り時の予想外の請求で受け取りを拒否されることがあります。
- 販売者が販売時に徴収し、納める:購入者は追加の支払いなく受け取れます。仕向地の制度への登録や、配送会社との契約が必要になる場合があります。
どちらの方法でも、商品ページや注文時に、税金の扱いを分かりやすく表示しておくことが大切です。
3. 主な仕向地の少額貨物の制度
少額の輸入貨物に対する税金の制度は、各国で見直しが進んでいます。確認時点(2026年10月12日)の主な例は次のとおりです。
- EU:少額の貨物にも付加価値税がかかり、一定額以下の貨物では、販売時に税を徴収して申告する仕組み(IOSS)が使えます。
- 英国:一定額以下の貨物は、販売時に販売者が付加価値税を徴収する仕組みになっています。
- 米国:少額貨物の関税を免除する制度(de minimis)が2025年8月29日からすべての国を対象に停止され、少額の貨物にも関税と通関の手続きが必要になっています。2027年7月1日には、商業貨物について制度そのものを廃止する法律が施行される予定です。
制度は変更が多いため、販売する国の最新の情報を、配送会社や現地の専門家に確認してください。米国向けの全体像はアメリカへの輸出ガイド、EU向けはEUへの輸出ガイドをご覧ください。
4. 送れない商品・注意が必要な商品
- 電池を含む商品:リチウム電池は、発送方法によって送れない、または条件があります。リチウム電池の輸送をご覧ください。
- 液体・スプレー・香水:引火性があるものは、危険物として扱われることがあります。
- 食品・化粧品:仕向地の規制で、販売に登録や表示が必要な場合があります。
- ブランド品・キャラクター商品:正規品であることを示せないと、仕向地で差し止められることがあります。
日本から送れても、仕向地で輸入が禁止・制限されている商品もあります。販売を始める前に、発送方法ごとの条件と、仕向地の規制を確認しましょう。
5. 返品への備え
国際配送での返品は、送料が高く、再輸入の手続きも必要になるため、事前に方針を決めておくことが大切です。
- 返品を受け付ける条件と、送料の負担者を明記する
- 単価の低い商品は、返送ではなく返金のみで対応することも検討する
- 海外倉庫を使う場合は、倉庫で返品を受け付け、再販売できるかを確認する
- 日本に返送する場合は、再輸入時の関税の扱いを確認する
6. 輸出免税の書類
海外の購入者に販売した商品は、日本の消費税が免除される輸出取引に当たる場合があります。免税を受けるには、輸出したことを証明する書類(輸出許可書や、郵便の場合の発送の控えなど)を保存する必要があります。
発送方法や金額によって必要な書類が異なるため、税理士や配送会社に確認し、注文ごとに書類を保存しておきましょう。貿易書類の管理方法も参考になります。
7. よくある質問
どのくらい売れたら海外倉庫を使うべきですか?
決まった基準はありませんが、特定の国で継続して注文があり、1件ずつの送料が利益を圧迫している場合に検討します。倉庫の費用と在庫のリスクを含めて比較しましょう。
海外倉庫への輸送では、誰が輸入者になりますか?
現地で輸入者となる事業者が必要です。自社の現地法人、倉庫会社のサービス、輸入者を代行するサービスなど、選択肢を確認してください。
越境ECの物流会社はどう選べばよいですか?
対応できる国、発送方法、システムの連携、返品の対応を比較します。越境ECの物流会社の選定基準もご覧ください。
参考情報と関連ガイド
各国の制度は確認日時点の概要です(確認日:2026年10月12日)。制度の変更が多いため、販売前に配送会社・現地の専門家に最新の情報をご確認ください。