EU(欧州連合)向けの輸出では、加盟国のどこに着けても共通の関税・税関のルールが適用されます。一方で、輸送の日数が長く、事前の貨物情報の提出や製品規制など、出荷前に確認すべき事項が多い仕向地でもあります。
EUへの輸出では、①EU側の輸入者とEORI番号、②事前の貨物情報(ICS2)、③日EU EPAの原産地の申告、④製品の規制と表示、⑤到着港から納品先までの輸送を、出荷前に確認しておきましょう。
1. EU側の輸入者とEORI番号
EUで輸入申告を行う事業者には、EORI番号(税関の事業者登録番号)が必要です。通常は買い手がEU側の輸入者となり、現地の通関業者に申告を依頼します。日本の輸出者がDDP条件などでEU側の通関を引き受ける場合は、自社のEORI番号の取得や、輸入時の付加価値税(VAT)の扱いを確認する必要があります。
輸入時には関税のほかに、各加盟国の税率で付加価値税がかかります。どちらが負担するかを取引条件で明確にしておきましょう。
2. 事前貨物情報(ICS2)
EUでは、域内に到着する貨物の安全確認のため、輸入管理システム(ICS2)を通じて事前に貨物情報(ENS)を提出する仕組みがあります。長距離の海上コンテナ貨物では、原則としてEU域外の積出港で本船への積み込みが始まる24時間前までに情報を提出する必要があり、船会社やNVOCC・フォワーダーが対応します。
提出には、正確な品名、荷送人・荷受人の情報、HSコードなどが必要です。「部品」「サンプル」のような曖昧な品名は受け付けられないことがあるため、インボイスの品名を具体的に記載しましょう。インボイス・パッキングリストの解説も参考になります。
3. 日EU EPAの原産地の自己申告
日EU経済連携協定(日EU EPA)を利用すると、日本原産の多くの品目でEU側の関税が削減・撤廃されます。この協定では、原産地証明書の発給を受けるのではなく、輸出者や輸入者が自ら原産地を申告する「自己申告制度」が使われます。
- 輸出者による申告:インボイスなどの商業書類に、協定で定められた文言で原産地に関する申告文を記載します。日本の輸出者は、参照番号として法人番号を記載します。
- 輸入者の知識に基づく申告:EU側の輸入者が、自ら持つ情報に基づいて原産品であることを申告する方法です。
- 根拠資料の保存:原産地の基準を満たすことを示す資料を保存し、確認を求められた際に提出できるようにしておきます。
EPAの基本はEPA/FTAの解説、証明の方法の違いは原産地証明書の解説をご覧ください。
4. 製品の規制と表示
- CEマーキング:機械、電気機器、玩具など、対象の製品はEUの安全基準への適合を示すCEマーキングが必要です。
- 化学物質:REACH規則やRoHS指令など、化学物質の含有に関する規制があります。
- 食品・化粧品:原料・添加物の基準、表示、責任者の登録などのルールがあります。
- 炭素国境調整措置(CBAM):鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料などの対象品目について、2026年から本格的な適用が始まっています。年間の輸入量が一定の基準(50トン)を超えるEU側の輸入者は、認可を受けた申告者となる必要があります。対象の場合は、製造時の排出量のデータを買い手から求められることがあります。
製品規制への適合は、通常、EU側の輸入者や販売者と協力して確認します。物流会社は規制の判断を行わないため、出荷前に買い手と分担を決めておきましょう。
5. 到着港と輸送ルート
欧州向けの海上輸送では、ロッテルダム(オランダ)、ハンブルク(ドイツ)、アントワープ・ブルージュ(ベルギー)などの主要港を経由し、トラック・鉄道・内航船で各国の納品先へ運ぶルートが一般的です。
| 方法 | 向いている貨物 | 確認すること |
|---|---|---|
| 海上輸送 | まとまった荷量、納期に余裕がある貨物 | 到着港、航路の迂回による日数の変化、内陸輸送の費用 |
| 航空輸送 | 急ぎの部品、単価の高い商品 | 到着空港、容積重量、EU側の配送 |
| シーアンドエア | 船より早く、航空より安く運びたい貨物 | 中継地、積み替え時の取り扱い、総日数 |
紅海周辺の情勢などにより、アジア・欧州航路が喜望峰経由に迂回し、日数や運賃が変動することがあります。予約時点の航路と日数を確認してください。シーアンドエアについてはシーアンドエアの解説をご覧ください。
6. EU向け輸出の見積もり依頼例
以下は架空の記入例です。運賃・納期の実績を示すものではありません。
貨物:大阪府の工場からドイツ・ミュンヘン近郊の工場へ送る工作機械用の部品。パレット6枚、各120×100×100cm、総重量3,000kg。
取引条件:CIPミュンヘン。輸入通関はドイツの買い手が手配(EORI番号あり)。
確認したいこと:海上LCL・航空・シーアンドエアの総額と日数、ICS2の提出に必要な情報、日EU EPAの申告文の記載方法。
7. よくある質問
英国向けもEU向けと同じ手続きですか?
英国はEUを離脱しているため、関税・通関の制度はEUと別です。日本と英国の間には日英包括的経済連携協定があり、原産地の申告や規制も英国のルールに従います。
EUのどの国に着けても関税は同じですか?
関税率はEU共通です。ただし、付加価値税の税率や、一部の手続きは加盟国によって異なります。
日EU EPAを使うのに事前の登録は必要ですか?
日本の輸出者が申告する場合、参照番号として法人番号を使います。原産地の基準を満たすかの確認と、根拠資料の保存が必要です。
参考情報と関連ガイド
協定の情報は税関のEPA関連ページ、ICS2は欧州委員会の公開情報を参照しています(確認日:2026年10月12日)。制度は変更されることがあるため、出荷時点でEU側の輸入者・通関業者に最新の扱いをご確認ください。