アメリカは日本にとって主要な輸出先の一つです。一方で、米国向けの海上輸送には、本船に積む前に貨物情報を米国当局へ提出する独自のルールがあり、日本側の出荷準備が遅れると、予定の便に積めないことがあります。
アメリカへの輸出では、①米国側で誰が輸入者になるか、②出港前に提出する情報(ISF・AMS)、③関税と米国の規制、④到着港から納品先までの手配を、出荷前に確認しておくことが大切です。
1. 米国側の輸入者とカスタムブローカー
米国の輸入通関では、輸入者(Importer of Record、IOR)が申告の責任を負います。通常は米国の買い手がIORとなり、米国のカスタムブローカー(通関業者)に通関を依頼します。
- 買い手がIORになる場合:買い手が手配するカスタムブローカーの連絡先を確認し、インボイスなどの書類を早めに共有します。
- 日本の輸出者がIORになる場合:DDP条件などで、日本側が米国の関税・通関を負担する場合です。米国での登録や、関税の支払いに必要な保証(ボンド)の手配が必要になります。
どちらがIORになるかで、日本側が準備する書類や負担する費用が変わります。取引条件はインコタームズの解説で確認してください。
2. ISF(10+2)とAMSの提出期限
米国向けの海上貨物では、外国の港で本船に積む前に、貨物の情報を米国税関・国境警備局(CBP)に提出する必要があります。
| 名称 | 提出する人 | 期限・内容の目安 |
|---|---|---|
| ISF(Importer Security Filing、10+2) | 米国側の輸入者(実務では代理人が提出) | 外国の港で本船に積む24時間前まで。売り手・買い手、製造者、品目番号、バンニング場所などの情報 |
| AMS(積荷目録) | 船会社・NVOCC | 外国の港で本船に積む24時間前まで。B/Lごとの貨物情報 |
ISFには、製造者の名称・住所や、コンテナに積んだ場所など、日本の輸出者しか分からない情報が含まれます。米国側の輸入者やその代理人から情報の依頼があったら、ブッキングの段階で回答できるよう準備しておきましょう。提出の遅れや誤りは、罰金や貨物の検査につながることがあります。
制度の詳細はCBPのISFに関する案内(英語)で確認できます。ブッキングから積み込みまでの締切はブッキングとCYカットの解説にまとめています。
3. 関税と米国の規制の確認
米国の関税は、2025年以降に追加関税の導入や税率の変更がたびたび行われています。出荷時点の税率は、米国側の輸入者やカスタムブローカーに必ず確認してください。品目の分類(米国の関税分類番号、HTS)によって税率が変わるため、日本で使っているHSコードと米国の番号が一致するとは限りません。
- 食品:米国食品医薬品局(FDA)への施設登録や、輸入前の事前通知が必要です。
- 電子機器:無線機能がある製品は、米国連邦通信委員会(FCC)の認証が必要な場合があります。
- 子ども向け製品・消費者向け製品:消費者製品安全委員会(CPSC)の基準や証明書が必要な場合があります。
- 原産国の表示:商品や包装に原産国(Made in Japanなど)の表示が求められます。
また、日本からの輸出で外為法の規制対象となる貨物もあります。輸出許可申請の解説も確認してください。
4. 到着港と内陸への輸送
日本からの海上輸送では、ロサンゼルス・ロングビーチなど西海岸の港を使い、そこから鉄道やトラックで内陸へ運ぶルートが多く使われます。東海岸の納品先へは、パナマ運河を経由する便で直接運ぶ方法もあります。
| 納品先 | 比較するルートの例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 西海岸 | ロサンゼルス・ロングビーチ、オークランド、シアトル・タコマ | 港の混雑、ドレージの手配、空コンテナの返却 |
| 中西部・内陸 | 西海岸の港から鉄道で内陸の拠点へ | 鉄道の接続日数、内陸の拠点での引き取り |
| 東海岸 | ニューヨーク・ニュージャージー、サバンナなどへの直行便、または西海岸経由の鉄道 | 海上輸送の日数と、陸上輸送の費用の比較 |
5. DDP条件で引き受けるときの注意点
買い手から「関税込みで納品してほしい」と依頼されることがあります。DDP(関税込持込渡し)は買い手にとっては便利ですが、日本の輸出者が米国の関税・通関の責任を負います。
- 関税が変更されると、利益が大きく変わる可能性があります。
- 米国側でIORとしての登録・ボンドの手配が必要になります。
- 検査や保留が発生した場合の対応と費用も、輸出者の負担になります。
DDPで引き受ける場合は、米国側の通関を手配できるフォワーダーに、関税・税金の立替や請求の方法も含めて相談してください。
6. アメリカ向け輸出の見積もり依頼例
以下は架空の記入例です。運賃・納期の実績を示すものではありません。
貨物:静岡県の工場からイリノイ州の倉庫へ送る産業用ポンプ。木箱4個、各120×100×110cm、総重量2,400kg。電池なし。
取引条件:FCA清水港(買い手指定のフォワーダーに引き渡し)か、CIPシカゴのどちらかで買い手と交渉中。
確認したいこと:LCLと20フィートFCLの総額・日数、ISFに必要な情報の一覧、木箱の木材梱包の規格。
米国側:買い手がIOR。カスタムブローカーの連絡先は確認済み。
7. よくある質問
航空便でもISFは必要ですか?
ISFは海上貨物を対象とした制度です。航空貨物には別の事前情報の提出ルールがあり、航空会社やフォワーダーが対応します。
少額の貨物なら関税はかかりませんか?
米国では、少額貨物の関税を免除する制度(de minimis)は、2025年8月29日からすべての国を対象に停止されています。2027年7月1日には商業貨物について制度を廃止する法律が施行される予定のため、少額でも関税や手続きが必要になる前提で準備してください。
木箱で輸出するときの注意点は?
木製の梱包材は、国際基準(ISPM No.15)に沿った処理と表示が求められます。処理済みの木箱を用意できるか、梱包業者に確認しましょう。
参考情報と関連ガイド
米国の制度はCBPの公開資料を参照しています(確認日:2026年10月12日)。米国の関税・規制は変更が多いため、出荷時点で米国側の輸入者・カスタムブローカーに最新の扱いをご確認ください。